「読める人の方が少ない」という意見を聞くようになりました。

物語を「読む」のも技術の一つ。

最近、物語を書くよりも、物語を読める人の方が少ないという事を言う人が周りにチラホラと増えてきました。

物語を読める人の代表格は、編集者でしょうか。

ここ数年、小説投稿サイトの台頭で、編集者不要論が言われるようになり、編集者サイドからも、自分達は要らない存在かもしれないという弱気発言まで出てきています。

しかし、作品を世に出すには、作家1人の力では大変です。

作家に寄り添い、具体的にアドバイスをして、作品をより良くしていく事が、編集者の重要な仕事です。

そして、その為に必要な技術が「読む技術」です。

読む技術があれば、編集者だけでなく、プロデューサーにもなれますし、映画監督、演出家にもなれます。

さて、冒頭の話に戻りますが、読める人が少ないと言う事を言ってる人は、ゲーム関係者だったり、小説家志望者だったりするのですが、興味深いのは、ひと昔前は全く聞かなかった「読める人が少ない」という発言を、最近、聞く様になった事です。

これは、作品を読む事も重要だと言う理解が広まっていると同時に、それが出来る人が少ないのでは?という疑念や危機感や不安感も広まっているのかなと思いました。

特に小説家志望者さんにとって、自分の作品をコンペ審査員は正しく読んでくれているのか?という不安や苛立ちはついて回るかと思います。

昨今、様々な小説コンペが、かなり増えているのですが、それらの新興のコンペが、どうやって応募作を読んでいるのかなと思う時もあります。

尚、「作家塾」では、読む力も、長年、重視してきました。

講師は、もちろん懸命に生徒さんの作品を読みますが、生徒さん同士でも互いの作品に目を通し、意見を言って頂いています。

読む力は、書く力に繋がるからです。

もちろん読む力は、前述した通り、映画監督、演出家、プロデューサー、編集などの仕事を目指している方にも役立ちます。

読む力の重視が、作家塾が小さい塾ながらも、割と多くの結果を出す事に繋げてくれたと思います。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

エッセイと物語の違いについて。「作家塾」の授業より

最近の「作家塾」でエッセイを書いてきてしまう生徒さんが居られました。

それで、エッセイと物語の違いについて、説明する機会がありました。

「エッセイ」とは、作文の事です。
書き手が体験した事、それに関する感想などを書き連ねた文書です。
小学校で誰でも書いた経験がある筈です。
ちなみに、ある作家さんの言葉をお借りすると「エッセイ=自慢話」と言う事さえあります。
エッセイの本質を捉えた言葉だと思います。

一方の「物語」には、必ず主人公が居ます。
そして、主人公の視点で物語が展開し、大抵の場合、準主役が居て、そこに向かって主人公が接近していく構成になっています。
これが、物語の特徴です。

読者は、主人公に感情移入し、主人公と一体化して、物語の世界を体験します。

ですので、物語を書きたいと思ったら、主人公と準主役は必ず設定し、主人公になりきって物語を書きましょう。

エッセイと物語の違いは、はっきりしているのですが、改めて言葉にしてみると、物語とは何か?という事を考える良い機会になりました。

作家塾では、こんな感じの授業もしています。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

~準主役の役割~ <作家塾の講義より>

〜本日の作家塾の講義よりご紹介〜

・「準主役」の役割について
準主役とは、主人公が接近していく対象です。

準主役は、必ずしも主役の味方である必要は無く、敵対する相手でも準主役になります。

物語の開始時に、主人公と準主役の関係性が描かれ、以後、結末に向かって主人公が準主役に近づいていき、クライマックスで再接近し、結末で両者の関係の結論が描かれます。

世の中に出回っている小説、漫画、映画を分析してみると、概ね上記のパターンになっています。

面白い物語を書くには、主人公と準主役の関係性が面白い必要があります。

自分が面白いと思える物語で、主人公と準主役の関係性がどうなっているのか分析してみても、良い勉強になるかと思います。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

本日の作家塾の授業。

たまには、作家塾の授業をご紹介します。

今現在、作家塾は、木曜・土曜クラス合わせて10名前後の方が参加されています。

小説を書きたい方、脚本を書きたい方の比率は、半々くらいです。

本日は、土曜クラスの授業がありました。

授業内で「ドラマとは、主人公と他者との心の距離が近づいていく様子を描いたもの」という講義もしました。

それに関連した技術として、主人公だけでなく、準主役の視点で描かれたプロットを書く事も講義しました。

そして、生徒さんが書いてきたプロットの意見交換も行いました。

作家塾の授業は、こんな感じで行われています。

ちなみに、作家塾に参加されるのでしたら、木曜クラスの方が人数が少ないので、おすすめです。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

素材とテーマの違い

作品にとって、最終的に重要な事は「テーマ」です。

以前もご説明しましたが、物語の「素材」と「テーマ」は違います。
たまにテーマと素材を混同している方がおられますので、再度、説明させて頂きます。

「素材」とは、物語のネタです。
例えば”温泉”や”お茶”をネタに小説を書く場合、これが「素材」です。

「テーマ」は作家が言いたい事です。人生で大切にしている事とも言えます。
「テーマ」はオチのつけ方とも関係します。

その作品の印象を決定づけるのはテーマです。

テーマがあやふやだと、どんなに文書表現が上手い小説でも読者に強い印象を与えられないでしょう。

作品を書く技術が極まったとしても、結局は、その作家のテーマが重要になります。
逆に言えば、書く技術が拙くとも、強いテーマがあれば、読者に強い印象を与えられます。

テーマに良い悪いは、無いです。
テーマが、きちんと書けているかどうかが重要です。
テーマがはっきり書けていると言う事が、強いテーマなのです。

また、テーマは、その作家が持っているものなので、変えようがないです。
自分のテーマが正直に書けているか、恐れずに書けているか、それが大切です。

ちなみに生き方が変わるとテーマも変わります。
その作家の人生と共にテーマはあります。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

プロットの初稿は90分で書く

プロットの書き方について、これまでも作家塾のブログで理論みたいな事をいくつか書いてまいりましたが、今回は、実際に書くにあたってのコツをお伝えします。

<手書きが良いです>
手書きの方が感情が入り易いです。これは手書きの手紙の方が心がこもっていると言われるのと共通しています。

<90分くらいは時間をとって書く>
新たなプロットを書き始める際には、90分くらいは時間を確保しましょう。

<集中できる環境で書きましょう>
静かな自室、図書館など集中出来る場所で書きましょう。一度、書き始めたら集中し、書く事だけに専念しましょう。

<一気に最後まで書きましょう>
90分以内で、始まりから終わりまで書かれたプロットを一気に書きましょう。多少、荒削りでも構いません。オチまで取り敢えず書いてみましょう。

<オチまで書けなかったプロットは捨てる>オチまで書けなかったプロットは捨てていいです。

<オチまで書けたプロットから良いのを選びましょう>もし、オチまで書けたプロットがいくつか出来た場合は、その中から一番良いと思えるものを選びましょう。

<オチまで書けたプロットを次回以降、リライトしていく>オチまで書けたプロットが出来たら、ひとまず終了です。
次回以降、リライトをしていきます。イマイチだと思う箇所を直していきましょう。
リライト作業まで来れば、書く時間は30分でも良いですし、時間がなければ読むだけでも良いです。
しかし、出来れば60分〜90分の時間が取りたいものです。

<1日、90分以上は書かない>
逆に1日、90分以上は書かないでおきましょう。集中力が切れて、良くないアイデアを書いてしまうからです。

以上が、プロットを書き始める際のコツです。

コツを掴めば、より書きやすくなると思います。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

物語の“入り口”と“出口”が同じでも許されるには?

読者に愛される作品を書くのは、本当に難しいのですよ。

基本的に、物語の始まり「入り口」と、物語の結末「出口」は、大きく変化していた方が望ましいです。

例えば、弱虫だった主人公が、困難を乗り越え、最後は強くなる。

もしくは、悪人だった主人公が、最後は改心し、良い人間になるとかです。

しかし、中には、主人公が最初から最後まで変わる事なく終わる物語の書き方もあります。

ただ、そういう物語は、基本的には、あまり面白くありません。

例えば、何処にでも居る平凡な主人公が、最後まで平凡なまま終わっても、だから?という印象を読者に与えてしまいます。
(そういう作品は、通好みの作品になる可能性はありますが)

物語の入り口と出口が同じでも、読者に面白い印象を与えるには「書いている内容に迫力がある」事が重要です。

例えば、異常な主人公が、異常な行動をして、異常なまま終わる……と言うのであれば、読者は面白いと言ってくれる可能性が高まります。

そういう作品は、カンヌ映画祭の様なアート色が強い作品が好まれる市場に多いかと思います。

文学なら、芥川賞の様な純文学がそういう傾向にある様です。

また、時代の欲望を描いた場合でも読者が面白がってくれる事があります。

時代の欲望は、時代ごとに変化していきますが、今はこれが求められている!と敏感に察知して誰よりも早く作品にしてしまうのも、作家の一技術である事は確かです。

ただ、入り口と出口が同じ作品は、飽きられやすいと言う弱点があります。

一時は、もてはやされた作家でも、入り口と出口が同じ作品しか書けないと、数年で書けなくなるか、飽きられます。

そうして消えていく作家は、案外、多いのです。

やはり、物語の入り口と出口は少しでも変えるという事を基本として書く努力をする方をおすすめします。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

初心者の筆が止まらずにプロットを完成させる為の具体的な方法

久しぶりに小説・脚本の書き方について記事を書いてみます。本日は、初心者作家さんが、プロットを完成させる為の具体的方法について。

初心者作家さんにとって、プロットを書いてて、途中で筆が止まるんだけど……と言うお悩みもあるかと思いますので、それを乗り越える為の以下の様に書いては如何でしょうか。

・時間を決めて書く
プロットを書く際は、まず時間を決めて書きましょう。60分から90分、時間がなければ30分、机について集中して、鉛筆による手書きで始まりからオチまで一気に書きましょう。

・主人公になりきって書く
プロットを書く際は、主人公になりきって書きましょう。自分が主人公として、目の前にこういう事件が起きたら、強い敵が現れたら、片思いの相手と急に二人きりになれたら、どう思う?どう動く?という感覚を即興の演技をする様な感じで、そのまま文字で書き出しましょう。

ちなみに、もうひとつの注意点として、主人公の設定(性格など)が、作家とかけ離れ過ぎた人物だと書きにくいです。

主人公の職業が綿密な取材が必要な場合も初心者作家にはおすすめ出来ません。

最初は、主人公を、自分と近しいキャラ設定で書いてみましょう。

・ひとつの作品のプロットを何度も一から書く作業を積み重ねる
ひとつの作品のプロットを、毎日、始まりからオチまで書きあげる作業を重ねましょう。いわば物語のあり方を何度も模索する作業です。
何度も様々なパターンでプロットを書き重ねる事で、物語の構成や、主人公のあり方、その他の登場人物など、様々な事が固まってきます。(良いと思ったアイデアは大事にとっておきましょう)
そして、最終的に800字のプロットとして清書します。こうしてプロットは完成です。

以上が、プロットを書くための具体的方法です。

今回、特に意識して頂きたい事は、最終的なプロットが完成する迄に、即興的にプロットを書く作業を何度も重ねる点です。

演技のレッスンでも、即興(エチュード)で演技する方法があります。大まかな状況設定に基づいて、役者がアドリブで演技をするレッスンですが、プロットの書き方も、それと同じです。

そして、何度もプロットを書いていく事で、これで間違いないというアイデアが固まっていき、最終的に正式なプロットが完成します。

正式なプロットが完成する頃には、作者は主人公などの登場人物を明確にイメージして、本編を書ける様になっている筈です。

(花野組福岡「作家塾」)

クライマックスは、何度でも練り直す。

小説とは文字のエンタメ。その為にクライマックスは何度も盛り上げましょう。

「プロット」の完成度が9割ほどになった状態(物語の構成も出来て、良いオチも書けて、テーマも書けた!と言う状態が9割です)まで書けたら、仕上げはクライマックスの見直しです。

クライマックスとは物語の最大の盛り上がり部分の事ですが、何度も見直して更に盛り上がる余地が無いか、工夫を重ねましょう。

小説・脚本の存在意義は、エンタメです。
芥川賞の様な純文学と言えども、結局は、文字のエンタメなので、お客様に少しでも楽しんで頂くためにクライマックスは、作り込みましょう。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)

“準主役”を主人公と対立する関係にすると書きやすいかも。

名作スポーツドラマは、魅力的な「対立行動者」の宝庫です。

物語を書く上で、準主役、もしくは三番手を、主人公と対立する相手にすると、書きやすくなります。

例えば、主人公の敵役だったり、ライバルだったりという感じです。

こういう相手を「対立行動者」とも言います。

恋愛ものでも、主人公が片想いしている相手なら、それも対立行動者になります。

片想いの相手は、主人公の恋する気持ちを未だ受け入れてないので、主人公の恋する気持ちに対立した行動をしている対立行動者なのです。

ドラマとは、結局のところ「主人公の葛藤」を見て楽しむエンタメです。

そのうえで、対立行動者は、主人公の前に立ちはだかり、主人公に様々な葛藤を生じさせてくれる、有難い存在なのです。

魅力的な対立行動者は、ドラマを大いに盛り上げてくれます。

自分が面白いと思う映画や漫画、小説などでの対立行動者の描き方を分析するのも、良い勉強になります。

(花野組福岡「作家塾」運営事務局)